“日本人はクラシック音楽をどう把握するか”
初版平成6年6月10日
第7版
廃版
芸術現代社
言語と音楽の関係を解明
日本人がなぜ西洋音楽の勉強に苦労を伴うのかを言語の違いから発っしていることを理論的に解明。
超専門書であるのに黙々と売れ続け1万冊7版まで増版した。
‘日本人はクラシック音楽をどう把握するか’の販売の終了に伴ってタイトル、副タイトルを替えてメトロポリタンプレスから出版
2015年9月16日より発売
この本を手にされた方は音楽や言葉の問題に何らかの興味を持ち、そして何か新鮮なものを求めている方々に違いありません。
皆さんは音楽について次のような疑問を持ったことはないでしょうか。
すなわち日本人には世界的プレーヤーが多くいるように感じますが、本当にそうなのでしょうか。
寝食を忘れるほど熱心に勉強している割には上手くなれない、指先の器用さで有名な日本人がテクニックに悩んでいるとは思わないでしょうか。私達は勉強不足なのでしょうか。音楽を愛する気持ちで西洋人に負けていたのでしょうか。あるいは練習の方法が良くないのでしょうか。いずれにせよ「私には才能がなかった」と簡単にかたづけられない人も多いでしょう。しかし上達出来ないという現実は目の前から消えることがありません。その理由がわからないまま「練習あるのみ」と、ひたすら練習に明け暮れ、我慢と根性の鬼と化していないでしょうか。かつての私がまさにそうでした。
振り返ってみるとクラリネットに情熱の全てをかけて過ごした青春時代がとても懐かしく思い起こされます。
練習中のある日のことですが、友人と他愛もないことを話していました。
『オイ傳ちゃんよ〜、もし一錠飲んだらよー、スゲー楽器が上手くなる薬があるとするんだよ、そしたらいくらで買う⋯』
『へー、そんな薬が出来るんかよー⋯、そーよなー』
上手くなりたいという一心で寸刻を惜しんで必死に練習し、暗い日々を送っていた時だけに、藁をも掴みたい気持ちが一種運の夢をさそったのです。
しかし我にかえって現実を見た時、それはたまらなくわびしい気持ちになりました。
そんな夢見たいなことがあるはずないのに、夢と同じ数の苦労と音楽に対する疑問を背負い、気がついた時にはすでに私は秘薬を求めての長い放浪の旅路へと出発していたのでした。
それから20数年経った今、楽器上達をはばむウィルスを発見し、苦しさ紛れに夢見た薬がようやく現実のものに近づきはじめたのです。
内科医は聴診器で呼吸や心音を聞き、また肌の色艶を観察し、あるいは脈をとって総合的なところから判断して薬に調合をします。
ひとつのことから決めつけてしまうと誤診をまねき、“やぶ“と言われてしまうかも知れません。
人間を語る事の難しさもさることながら、人間が作り出す芸術、中でも時間の中で起こる静止する事のない複雑な音楽の現象を、仮に実演や演奏比較を交えたとしても説明することは難しいことです。ました本書はそれを文字のみで展開していかなければなりませんのでその困難さは想像を絶するものがあります。やむをえず他の学問分野まで踏み込んで論理を展開しているところもあります。そのため専門の方からはお叱りを受けるような記述があるかも知れません。しかし異分野への侵入を恐れていては境界領域の問題はいつまでも取り残されたままになってしまいます。教育者、演奏家である私はたとえ非難を受けても今こそ、それをやらなばならない時と大きな使命を感じています。南極にいるペンギンが人間を恐ろしさを知らないように、無知とは幸せなこともあるらしいことがわかりました。どうか暴挙をお許し願いたいと思います。
本著では言葉と音楽の深い関わりを述べていきます。そのため本書を演奏法とみるか文化論とみるか、あるいは単なる思いつきの羅列とみるかは本著を手に取る人の専門分野で大きく違うでしょう。
本書では楽器上達のための方法や、音楽の才能についての従来の定説に様々な疑問を投げかけますが、音楽関係者がこれらを見ると今までの音楽書と音楽の勉強の習慣を想起し、「これこれこうすればこうなる」という。Q&A的な簡便な解決法を期待してしまうかも知れません。しかし本書をめくってみても既成の演奏法は導かれませんし、また6章まで読み進まなければ主旨の理解が困難なこともあるでしょう。そのため論旨とは別枠の項目に本書でいる解決法を少し先走って「妙薬」と記載した別枠の項目に述べました。
上述のように音楽は多面的要素を持っているため、章を越えた項目が複雑に関係しています。そこで、より理解を深めて頂く為に関係の深い小目を〈→・・・〉、そしてまた〈脚注〉を多く示すと共に、専門的な解説は〈7章、追旨〉として巻末に載せました。また前後の文脈から本分に入れられない小目は〈補説〉としました。
賢明なる読者は上で述べたような細分化された構成が煩雑すぎると思われるでしょう。また本文中にも「なぜこんなにわかりきった事を書くのか」といる疑問を持つ方も多いかもしれません。しかしそれらを割愛してしまうと演奏法との関係が不明確になると私は判断し、このような構成を採用致しました。
本書で述べる方法論は、技術的難題を抱えている人達の助けになるような、あるいは障害を未然に防ぐための音楽に対するごく基本的な考え方を解いています。したがって情操としての音楽教育は語ってないことをお断りしておきます。
最後に私の真意を予め理解して頂くために、本書を通じて語られる基本的モチーフをここで述べておこうと思います。それは、日本人の言語や行動を通じて表れる’日本らしさ’が西洋の楽器を用いて西洋音楽を行う上での大きな障害となっている、という事実です。このことを念頭において本書を読み進めれば、読者は日本らしさを再認識しながら楽器上達のための大きなヒントを得る事になるでしょう。
楽器上達のための「音楽の妙薬」この薬は飲んで病気を治す飲み薬ではなく、読んで治す『読み薬』なのです。
本書を書き上げた数年後、「聴き薬が完成」致しました。
たった2分で演奏を激変させる事ができます。
恒久的な感覚にするためには20日間のトレーニングが必要です。
疑問に思われる方はどういったものなのか、是非体験にお出でください。
(株) 傳田聴覚システム研究所 Tel=045-439-5955 Fax=045-439-5956 info@denchoh.com